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自治体と大学の共同実践研究事業

CBPRとは

「コミュニティの健康課題を解決し、コミュニティの健康と生活の質を向上するために、コミュニティの人々と専門職/研究者のパートナーシップによって行われる取り組み・活動」

コミュニティ:「人々が共通の特性、例えば価値や規範、文化などを持ち、そこに何らかの帰属意識を持ち、さらにそこに一定の連帯や支え合いの意識が働いている集団」
パートナーシップ:「異なる立場の機関や人たちでつくられた組織の活動を通して形成される、信頼しあいそれぞれの力をいかして育ちあう関係性」

参考引用文献

  • 麻原きよみ. CBPRとは何か. CBPR研究会著. 地域保健に活かすCBPR: コミュニティ参加型の活動・実践・パートナーシップ. pp4-6, 医歯薬出版, 東京, 2010.
  • 原則1地域を、共通の価値観や帰属意識を持つ集団(コミュニティ)として捉えよう
  • 原則2コミュニティの健康問題を解決するために、コミュニティの強みや資源を用いよう
  • 原則3活動のすべての段階において、対等なパートナーシップを目指そう
  • 原則4それぞれの知識や技術を共有して互いに学びあい、能力を高めよう
  • 原則5活動の成果を、コミュニティに還元しよう
  • 原則6生態学的(エコロジカル)な視点で、コミュニティの問題を多角的に捉えよう
  • 原則7活動は、循環し繰り返しながら発展させていこう
  • 原則8結果を利用しやすい形でコミュニティに還元し,広く社会に普及させよう
  • 原則9長期的で持続できる活動として取り組もう

参考引用文献

  • 酒井昌子. CBPRの目的と原則. CBPR研究会著. 地域保健に活かすCBPR: コミュニティ参加型の活動・実践・パートナーシップ. pp12-18, 医歯薬出版, 東京, 2010.
循環と反復のプロセス

参考引用文献

  • 宮崎紀枝. CBPRのすすめ方. CBPR研究会著. 地域保健に活かすCBPR: コミュニティ参加型の活動・実践・パートナーシップ. pp19-27, 医歯薬出版, 東京, 2010.

これまでの共同実践の軌跡

健康問題を感じ取る

研究のための研究ではなく、実践現場の保健師と共に住民の幸せに直接貢献できる活動をしたいという思いを携え、急速な高齢化が見込まれる新興住宅地を数多く抱える自治体を訪ねました。「高齢になっても日常的な交流を継続できる身近な近隣他者との関係を見直し、その交流関係を活用した健康増進活動が小地域単位で必要なのではないか。そのためにモデル地区を設け、新興住宅街における中高年を対象とした交流促進プログラムを開発し、全国に広めていきたい」という課題意識と、前期高齢女性に焦点を当てた研究テーマについて話したところ、自治体の危機感と一致しました。

共同実践研究に取り組む仲間を集め、組織をつくる

企画調整の立場にあった保健師から、自治体と大学の共同実践研究事業という形式を整えてから始動させたいと提案があり、はじめての共同作業として、共同実践研究事業に関する覚書を作成しました。事業の目的を明文化し、自治体と大学の双方の役割や責任の所在などの取り決めを、首長と学長の間で覚書として取り交わしました。

この事業に参加する主要メンバーを募り、事業を推進する核となる運営研究会を組織することにしました。企画調整担当保健師と各センターを回り、研究者から保健師全員に研究の主旨を説明し、意見交換をする場を設けました。運営研究会は、業務として位置づけられ、基本的に月1~2回のペースで自治体にて会合をもち、モデル地区の情報収集・アセスメントとプログラムの企画・実施・評価を行いました。討議は、住民サービスや政策に関わることは保健師が中心となり、司会進行や議事録作成、研究に関することは大学側のメンバーが中心となり、その時々で権限を確認しあい、リーダーシップやメンバーシップを取りあい、役割を分担しながら、意思決定を共有しました。

モデル地区の健康課題を明確にする

地区を担当する保健師からのヒアリング、既存資料の検討、地区視診、食生活改善推進員や町内会長など住民リーダーからのヒアリングを通して、保健師と研究者が新興住宅地の共通の健康課題として予測していたように、中高年の住民がこのまちでの老後に不安を抱き、一部の住民がそのことについて課題意識をもっていることを確認することができました。

課題に取り組みための計画をつくり、実施する

コミュニティ・アセスメントから健康課題が確認できると、運営研究会では、プログラムの具体化について検討を重ね、目的の確認や目標の設定、形式や内容、媒体作成に多くの時間と労力を費やしました。同時に、募集方法の検討も地区担当保健師や町内会長と協働し進めました。

共同実践研究の活動を評価し、普及する

計画の段階から、目的・目標に沿って評価を行う時期と方法を決めておきました。評価に用いるアンケート用紙やインタビューガイドの作成、データ分析等の作業は、研究者や大学院生が行い、結果の解釈は保健師と研究者で検討しました。

1年間の評価のための調査と結果の分析を進めながら、随時、学術集会での発表に向け、保健師と研究者の連名で抄録を作成し、発表内容を一緒に検討しました。

共同実践研究事業の目的・目標を共有し、さまざまな活動に共に取り組むプロセスを通じて、相互の理解が深まり、信頼し合える関係ができ、それぞれの力を生かしあい、学び合い、さらに大きな総合力を育みあうことできました。この関係性の発展こそが活動成果の充実と更なる活動拡大に繋がり、地域の底力を高めると実感しています。

これらの共同実践は自治体に限らず、学校や企業、地域団体との協働も可能であると考えています。

文献

  • 大森純子(2010):共に活動することを通じて育まれた保健師と研究者のパートナーシップ-新興住宅地における中高年女性のための近隣者との交流促進プログラムの開発-.CBPR研究会:地域保健に活かすCBPR
    コミュニティ参加型の活動・実践・パートナーシップ.医歯薬出版,東京,132-147.

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